水の特殊性|結晶化すると体積が増える
写真は、水が入ったペットボトルです。
左は液体のとき、右は凍って固体になったとき。
言わずもがな、水は氷になると体積が増えるので、その膨張によってラベルが切れてしまいました。
当たり前の現象ですが、液体の状態より、固体の状態の方が、体積が増える物質というのは、水くらいのものです。それが水の特殊性。
本ページでは、その特殊性に触れ、食品が解凍後にマズくなる理由を書いています。
解凍による破壊
上の画像の赤っぽいところは、肉の繊維とでも思ってください。
水は固体になると体積が増えるので、押し込められていた場所で大きくなり、外部に圧力をかけます。その際、外側にあるものを破壊してしまうケースもあるでしょう。
氷になって体積が増した後、解凍すれば体積が減ります。しかし、固体になったときに破壊した箇所は、そのまま。
破壊された箇所から肉汁が溢れたり、体積が増減した箇所に空気が入ったりと、あまり好ましくないことが起きます。
これが、冷凍ものがマズい原因でした。そこへ、新たな技術が登場します。
プロトン凍結
味を保つ冷凍技術、それがプロトン凍結です。
通常冷凍の場合、最大氷結晶生成温度帯(0℃~-7℃くらい)を通過する時間が長いため、氷結晶が大きく成長しやすく、細胞の破壊が進んでしまいます。
プロトン凍結では、電磁波と磁束の働きを利用して一度にたくさんの氷の核を生成することにより 氷の結晶が大きく成長することを防止。
だから細胞を壊さず、解凍時のドリップを少なくできるのです。
動画を見てもらうのが手っ取り早いですが、要は磁力と電磁波で水の分子の動きを抑え、結晶を大きくさせないというもの。
結晶に関しては、下記リンク先にて。
水の性質と三重点
- 温度が100℃以上で、気体
- 0~100℃では、液体
- 0℃以下では、固体
上記が、よく知られている水の性質です。
ただし、温度が同じでも、圧力によって、異なる状態になります。水の沸点が100℃というのは、1気圧の平地での話。高い山に登れば、沸点は低くなります。
高地は空気が薄いので、空気の重さが減る分、気圧が下がるからです。気圧は文字通り、気体の圧力のこと。空気も物質なので質量があり、重力の影響を受けている……。つまり、物質に働く圧力として存在しています。
じゃあ、温度や圧力を調節したら、「気体←→液体←→固体」の境目を見られるのではないか。そう思った人のために、気相・液相・固相が同時に共存する「三重点」の動画を紹介しています。
気相は、気体の状態にある相。液相や固相も同じように、液体や固体の状態にある形相。水の場合だと、温度が0.01℃、圧力が0.006気圧。もちろん、使う水にもよるでしょう。
凝固点降下
今まで書いてきたのは、混ざっていない水の話。
現実には、「水」だけで存在せず、いろんな物と混ざっています。混ざりにくい油とだって、界面活性剤を使って混ざっているように。
油との混ざり方には、「O/W(オイル・イン・ウォーター)エマルション」と「W/O(ウォーター・イン・オイル)エマルション」の2種類あります。
その辺は、下記リンク先にて。
で、他の物と混ざった水も、融点が0℃かと言うと、そうじゃない……。
油と水が混ざっているマヨネーズなどは、先に融点の高い油の分子が結晶化します。凍るわけですね。
ところが、水はマイナス15℃でも結晶化しません。混ぜ物があると融点が下がる。この現象を「凝固点降下」と言います。
なお、マヨネーズの水分は、マイナス20℃くらいで凍る模様。
どのくらいの混ぜ物があるのかにもよりますが、凝固点降下は食塩水や砂糖水でも起こる現象です。塩の濃度25%の塩水を凍らせるには、マイナス22℃まで下げないといけません。
なので、家庭用の冷凍庫では、たぶん凍らないでしょう。設定温度が、マイナス18℃だからです。操作してなければ。
※ 業務用の冷凍ストッカーなどは違います。生産終了品になりますが、「CR-221GF2」などはマイナス25℃(±2℃)です。あと、捨てるのが面倒。
冷凍室 -18℃以下
冷凍ストッカーを破棄する場合には、『フロン回収破壊法』に基づきフロン類の回収・破壊の料金、運搬、廃棄の料金が必要となります。
マヨネーズ実験
実際に、試してみました。
左から順に、冷凍ストッカーから出したばかりのマヨネーズ、冷凍ストッカー内に1日おいたマヨネーズ、そのあとに電子レンジで500Wで1分加熱したマヨネーズです。
オンボロの冷凍ストッカーの弱モードなので、何度まで冷えているか不明だと、先に断っておきます。
冷凍ストッカーに入れた後に、爪楊枝ですくうと写真の通り。少し硬くなり、シャーベット感があります。でも、形自体は凍らせる前と同じでした。
ちなみに、大豆油の成分はマイナス15℃で結晶化を始めるそうです。同じ温度でも、菜種油は ほとんど結晶化しません。
実験に使用したのは「キユーピー マヨネーズ」で、菜種油や大豆油などをブレンドした植物油を原料にしています。
大豆油などの融点が低い成分だけ、結晶化している。含まれている分だけ固まっていると思うと、少しワクワクしませんか? しませんよね……。
油水分離
水は、固体になると体積が増します。
食品を冷凍し、解凍したらマズくなる理由として、その体積の変化による「破壊」に触れました。マヨネーズの場合、せっかく油と良い具合に混ぜたのに、分離してしまうこともあるでしょう。
それが、油水分離。
キユーピーのサイトにも、そんなことが書かれていたので、敢えてやってみたのですが、結果は前項で書いた通り。
マヨネーズは0℃以下に置かれると油が分離します
冷凍食品でマヨネーズを使う会社は、どうやって油水分離という課題をクリアしたのか。気になるところですが、油の融点に触れているので、冷凍食品向きの油を使ったのかなと考えてしまいます。
まぁ、乳化破壊に対する耐性のこともあるので、融点だけでは判断できないでしょう。
エマルションの状態を壊すこと。解乳化。
まとめ
- 水は結晶化すると体積が増す
- 融点は気圧で変わる
- 混ぜると、凝固点降下を起こす
「食品の大部分は水分」というケースは、少なくありません。
「水」を知ることは、食品を知ることに繋がる。そう思い、軽く まとめてみました。それだけです。